子育て支援課……ではないだろう。子ども家庭課かな。私は少女の手をぎゅっと握り、机の向こう側にいる係員に声をかけた。
「すみません、あの……相談があるのですが、ここで良いのか分からなくて……ちょっとよろしいですか?」
急がしそうにパソコンのモニターを見つめていた女性がこちらを見た。そして立ち上がり、やってくる。
「どうしましたか? どのようなご用件ですか?」
私と彼女は立ったまま見つめ合う。そして彼女が、少女に目を落とす。
「どうぞお掛けください」
私達は勧められるまま、椅子に座った。
「あの……この子が……諸井ゆきちゃんっていうのですが……母子家庭だったそうなんですけど、お母さんが亡くなって数ヶ月ホームレスをしていたのだそうです」
「ホームレスですか……」
係員の女性は怪訝な面持ちで少女を見た。そして紙を出し、そこに書き込み始める。
「えーと、まずこの子と貴女のご関係は? 叔母さんか何かかしら」
「いえ……昨日会ったばかりの知り合いです」
係員はさらさらと二人の関係を書く。
「昨日会った知り合いと……どこで知り合ったのですか?」
「歌舞伎町のコンビニ前です」
「歌舞伎町、コンビニ前、と。諸井ゆきちゃんだったわね。歳はいくつかな?」
「…………」
「この子、言葉は話せましたか?」
「ええ。ゆっくりですが、話せました。大丈夫だよ、ゆきちゃん。年齢を話して」
「……じゅうはっさい……」
幼く見える少女が十八だと言ったので、係員はぎょっとした。
「十八!?」
「いえ……私には十五歳だと言ってました」
「え? 十五歳? 見えないわね。本当の歳はいくつなの?」
係員はゆっくりと少女に問いかけた。
少女は俯きながら呟く。
「……じゅうご……」
■続く