「けいさつがきたらにげろっておそわった……」
「ゆきさんはにげなくていいのよ。子供は守られて保護されるものなの」
「ほごなんてされない。それにこどもじゃない。もうママはしんだから、おとなにならなきゃ」
「ママが死んでも子供は子供です」
「でもちいさいときからはたらいてきた。おとな」
「それはゆきさんの周りの大人が、ゆきさんを騙していたんだよ。本当はね、ゆきさんを学校に通わせるのが大人の義務。小学校と中学校は義務教育だから、ゆきさんは学校に通って、お友達を作って、勉強しなきゃならない年だったの」
「ぎむ……ぎむ?」
「そう、義務。学校教育法に書かれているの。ゆきさんの周りにいる大人は、小学校と中学校にゆきさんを通わせなければいけませんよっていう法律」
「……ゆうき、ちゅうがっこうにいってた」
「そう、ゆきさんも行くべきなの。十五歳だからあと三ヶ月。どこかで通えるように私達がしないとね。そのためにおじさんの居場所が必要なの。ゆきさんのママが住民票を持っていたかとか、国籍や戸籍があったかとか、ゆきさんの戸籍とか、知っているかもしれない」
「しっているかな」
「知っているかもよ。戸籍や住民票があったら学校に通いやすくなるから」
「がっこう」
少女は納得したように頷き、それから私を見た。
「おじさんのところ、いく」
少女は私の服を引っ張り、急かした。

■続く

 

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