「まつり……」
少女は私に抱かれながら、呟いた。
「……まつりはふしぎ。はだかのしゃしんをとらせてはいけないっていう」
「……もちろんゆきちゃんにはゆきちゃんの理由があって写真を撮って貰っていたんだと思うんだけど……でも……私の我が儘なんだけど……ゆきちゃんの裸、おじさん達に撮って欲しくない」
「……まつりがいうなら、きく」
「嬉しい。ごめんね」
裸を撮らせる。それは少女にとって、その母親にとって生きる糧だったに違いない。私にそれを非難する資格があるのか。ないのではないかとも思う。
「我が儘だね……私」
「まつりのわがまま……すき」
「そう? ……嬉しい。ありがとう。そうだ、ゆきちゃんも化粧水とか付けようか。ベッドルームへ来て」
私はベッドルームの窓を開け、風を通した。それからレースのカーテンを引き、着替える。
「そうだ。ゆきちゃん、お気に入りの美容室とかあった?」
「びようしつ…………ママに髪を切って貰っていた」
「そっか。うーん、美容室、どこに行こうかね。最近、髪の毛切ってないでしょう? 可愛くしようね」
「……うん」
少女は嬉しそうに少しだけ目を細める。
「かわいく……する」
「うーん。いつも行ってる美容室へ行くか、近くの美容室へ行くか、悩むなぁ」
私は休日用のレイヤード・ネックのセーターと、デニムのパンツに着替えた。
「いつも行ってる美容室へ行くか」
いつも私が行ってる美容室は歌舞伎町にある。もしかしたら少女の知り合いがいるかもしれない。
軽く化粧をし、少女にも化粧水と乳液を渡す。
「手のひらに少し取って顔に付けるの。こっちの瓶が先ね」
少女は私の真似をして、瓶から化粧水を出し、顔に付ける。そして乳液も付ける。
「ぷるぷる」
「そうね、ちょっとぷるんって感じになるでしょ? あとゆきちゃんにショートコートを貸してあげる。後で新しいのを買おうね」
「コート……さむくなくなるね」
「そう。温かくなるから」
少女はコートも持たされずにおじさんの家を追い出されたのだろうか、と私は思った。
母親が亡くなった時はまだ暖かかったのかもしれない。だが……。
考えても無駄だと思っても、少女の人生を考えてしまう。想像してしまう。
聞き出すことに少し躊躇しながら……。

■ 続く