「ごちそうさま」
少女は再び手を組んだ。
「どういたしまして」
私はお皿を片付け始めた。少女も立ち上がり、お皿を運んでくれた。
「この引き出しが食器洗浄機。……といっても外食続きであまり使ってないんだよね」
私はスマホで使い方を検索した。
「えーと『下処理』。汚れは簡単に落としてくださいと」
私はお皿やフライパンの汚れをさっとお湯で落とした。
「食器を縦にセットして……洗剤をセットして……えーと標準コースかな」
「……まつり、しょっきあらいきがあるの?」
「うん、あまり使ったことがないんだけどね。二人分だし、使ってみないとね」
「すごい!」
「水でぶしゃああーって洗うんだよ」
「すごい!」
どうもちゃんとセット出来たようだ。不安だが、出かけなければならない。
「さてと……美容院行ったり、服とか靴とか買いに行こうか。私、着替えてくるね」
「まつり、服着てる」
「これは部屋着だから。お化粧もしなきゃだしね」
「おけしょう!」
「……ゆきちゃんも基礎化粧品とリップクリームぐらいは付けようか」
「おけしょうしたことある。しらないおじさんとしゃしんをとったとき! ママがきれいにしてくれた」
「そうなんだ」
「はだかでね、ランドセルっていうの? かばんをしょってね、しゃしんをとるの」
「……ゆきちゃん、裸で写真撮るの禁止だから」
「きんし? なぜ?」
少女は黒い瞳をぱちくりしながら、不思議そうに私を見た。
「そうね……うーん、ほら、まだ十八歳じゃないし。もっと大人になって選挙も行けるようになって、ゆきちゃんが撮りたいって思った時に撮るといいよ」
「いまもとりたいよ? きれいだね、かわいいねっておじさんたちがいってくれる」
「……ダメ」
私は少女をぎゅっと抱いた。
「ゆきちゃんは綺麗だよ。可愛いよ。だから裸の写真を撮っちゃダメ」
私だけの少女でいて欲しい。
そう思うのは我が儘だろうか。
それとも独占欲なのだろうか。