少女はボロボロになった靴の踵を踏んで歩いていた。GAPを出たら、伊勢丹に寄って靴を見よう。
私は会計を終わらせ、店員が見守る中、少女の服を着替えさせた。
更衣室から出てきた少女は、愛らしい白ウサギのようだった。
「よくお似合いですよ」
店員が言った。
「うん、私も似合うと思う」
少女は母親から貰ったボロボロになった服をぎゅっと握りしめていた。
「着ていた服を袋に入れてもらえますか?」
「かしこまりました」
店員に母親のお古を袋に入れてもらい、私達は店を出た。
「…………さむくない」
「ダウンコート、暖かいでしょ」
私はにっこりと笑った。
少女は少し目を細め、肩の力を抜いた。
「きょうは……たんじょうびのつぎのひ……さむいね」
「そうだね。もう十二月だから。コートを着る季節だよ」
「……コートってきたことがなかった。こんなにあたたかい……」
「気に入った?」
「……きにいった」
「良かった」
少女はもう少しケバい色の服が欲しかったのだろうな、と思いながら、お世辞かもしれない「気に入った」という言葉を聞いて、私は安心した。
「伊勢丹へ行って靴と下着を見ようか」
「……いせたん……?」
どうも少女は伊勢丹に入った事が無かったようだ。
「すぐそこにあるデパートだよ」
私はちらっと少女の靴を見て、やはり靴売り場から行くべきだろうかと思った。

■続く