■ 17

「いただきます」
「……いただきます」
少女は手の指を組んだ。
「……ゆきちゃんって、キリスト教徒?」
「……キリストきょう。ママはたまにきょうかいへいってた」
「そうなんだ……あっ、もしかしてクリスマスパーティーとかやってた?」
「……ママはしごと。でもよなかにチキンとケーキをかってきてくれた」
「ごっめーん。私、そういうイベントに疎くてさ。それに今日誕生日だよね。十五歳になったんだっけ」
「……じゅうろくさい」
「えっ、十五歳って言ってなかった?」
「じゅうよんさいのいっこうえ」
「十五……かな」
「ようすけはじゅうななさい。いっこした」
ようすけって誰だよと思ったが、突っ込まなかった。
「十七の下は十六歳。どっち?」
「……どっち?」
「うーん、年齢が分からないのかな。おでん、好きなの食べて」
「どれでもいいの?」
「どれでもどうぞ」
「だいこん、ちくわぶ、たまご、おもち」
「はいはい、大根、ちくわぶ、卵、餅巾着ね。あと鳥の手羽元」
私は少女におでんを手渡した。それから自分のボールにおでんを入れる。
「ところでようすけって誰?」
「コンビニであったひと。たくじじょでもあったことがある。おまえはオレのいっこしただって」
「ママは去年十四歳だって言っていた。ようすけ君は十七歳でゆきちゃんを一個下だって言ってた。どっちが正しい?」
「ママ」
「じゃあ十五歳かな」
「ようすけがじゅうろくさいのほうがなにかとつごうがいいっていってた。でもいちばんいいのはじゅうはっさいなんだって」
「なる程。都合の良い年齢が十六歳か」
「ごちそうさま」
「もういいの?」
「もういい」
「お腹空いたら言ってね」
「うん」
「ところでゆきちゃん、ケーキは食べる?」
「ケーキ……すき」
少女は目を丸くし、ちょっと前のめりになった。それからまたすっと表情を無くす。
「ご、ごめんなさい……」
「えっ? なんで謝るの?」
「……おこ……られる……」
「怒らないよ。好きな物を言って。私はゆきちゃんのこと、全然知らないしね。じゃあ、ケーキを買いに、ローソンへ行こうか。多分、クリスマスケーキ、売ってるんじゃないかな」
「ケーキ……たのしい」
「なんか微妙に違う。嬉しいの間違いじゃない?」
「ケーキ、うれしい」
「うん、嬉しいね。そろそろ服も乾燥し終わっていると思うんだ。一回、寝間着から着替えようか」
「うん」
少女は瞼をパチパチと動かした。それが彼女にとって喜んでいるというサインなのかもしれない。
「はい、洋服。もう乾いているよね」
「うん」
「あれ? 靴下は履いていなかったっけ?」
「うん」
「じゃあこれをあげる。旅行用に買ってあった新品だから気にしないで」
「しんぴん……」
「あれ? ブラジャーもなかったっけ?」
「ブラジャーはない。大人じゃないからいらないって、ママが言ってた」
「いやいや、子供でもブラジャーはするから。じゃあそれは明日買いに行こうか。ゆきちゃんは結構胸が……」
ちらり、と少女の胸を見てから、自分の胸を比べる。むむっ、どう見ても彼女の方が大きい。私のカップはB。彼女はEぐらいありそうな形の良い乳房をしていた。
「あるからね」
「むね、おおきいっていろんなひとにいわれた。おっぱいのしゃしんとっていい? っていわれて」
「言われて?」
「いいって言った」
「ダメ、ダメでしょ。ゆきちゃん、おっぱいってまさか裸?」
「はだか。ほてるとか、こうえんとかみち」
「ダメ、裸になっちゃダメ。公園とか道は特にね!」
でも少女に欲情しつつ、一緒に風呂へと入った私自身はどうなのだ。
彼女に、そして彼女の裸の写真を撮ったイヤラシイ大人達に駄目だと言う資格があるのだろうか。

■ 続く